年に数回程度の極まれな事ですが、外出中に知らないお子に唐突に懐かれることがあります。先日もスーパーマーケットで買い物している時に、小学1年生ぐらいの女児さんに「今日、何食ぶっと?(何を食べるの?)」と声を掛けられました。周りにたくさん人がいる中で、何故に私をターゲットにしたのか皆目見当がつきません。
例えば、私が妖怪ウォッチのグッズを身につけ、プリキュアTシャツを着、大声でドラえもんの歌を歌いながら大量のスナック菓子を買い漁り、「みんな!お菓子あげるから寄っといで!!」と奇声をあげたのならば、さぞかしお子達の興味をそそることでしょうが、誓ってそんなことはしておりません。もしそんなだったら、周りの大人は最大限の警戒を払うべきでしょう。
話を戻して、その時の私は安い豚肉を探して精肉コーナーの前をふらついていただけでした。その際にはもちろん歌など歌っておりません。万一、無意識に口ずさんでいたとしても、せいぜい「いつものよ~に幕~が開~き~」ぐらいなものです。やはり、お子の興味をそそる要素が見あたりません。もしかしたら「豚肉を物色する中年」が彼女の今週のラッキーアイテムだったのでしょうか?
また、その時の私の格好はドンキー襟のスタジャンにブラウンのチノパンだったのですが、それが何かの子供向けアニメの登場キャラの格好と合致したのでしょうか? うん、ちょっとそんなキャラいそう。だとしても、そいつはきっと2話目終盤で登場し、3話目で捨て台詞を吐きながら逃走して以降一切登場しない奴ですよ、たぶん。
自分の現状の因果性について考えあぐねていると、その子は私の買い物かごに入った鶏ムネ肉のパックを見て、「いっぱい食ぶっとねー(食べるんだね)。お鍋大っきかとー?(お鍋は大きいの?)」と尋ねてきました。私が「そうだよ」と答えると、すぐに「どいくらい?(どのくらい?)」と、お子。
「んー、そうだねー、これぐらい」と両手を1メートルほどに広げてみせると喜んでくれました。そしてその子はこう言いました。「お父さんに似とるー!(お父さんに似ている)」。
えっ、どの部分が? 大げさに話す様が? それとも君のお父さんは直径1メートルの鍋いっぱいの食材を日常的に食べる人なの? 何それ、フードファイター? それとも格闘家(総合系)?
答えに窮した私は「あはは、ありがとう」と苦笑いすることしかできませんでした。「ありがとう」って何だろ?
お子に「お父さんに似てる」と言われた際、その子、そしてそのお父さんに失礼に当たらない回答とはどんなものなのでしょうか? それとも無言で妖怪メダルをそっと差し出せばいいのでしょうか? しかしあいにく持っていないのです。
この難問は当分解決しそうにありません。