Perfumeにテクノオタクから最大級の感謝を捧げて

2025年9月21日、Perfumeが今年末をもってコールドスリープに入ることを宣言したことは、多くの皆さんがご承知のことでしょう。
そんな彼女たちに、心からの感謝の気持ちを捧げたいと思います。

本当にありがとう。

ここから先に筆を進めるにあたり、まずは私がPerfumeへ触れてきた個人的な来歴を述べます。

私は、2007年にリリースされた4thシングル「ファン・サーヴィス[sweet]」の頃にPerfumeを知り、そこから1stシングルまで遡りつつ、以降もずっと聴き続けてきました。
ただ、基本的にはもっぱら曲を聴くことに終始し、時々MVを観て「未来的でかっこいいビジュアルだな」と思うぐらいで、ライヴ動画などはほとんど観てきませんでした。
しかし、2025年8月15日にSONIC MANIAで初めて彼女たちのステージパフォーマンスを観て、遅まきながらパフォーマーとしての彼女たちの凄さにやっと気づきました。そして、9月23日に東京ドームで開催された圧巻のライヴ「“ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME」のアーカイブ動画配信を観た後に、感情に任せてこれを書いています。

その程度の者ですので、私は真のPerfumeファンとは言えません。ですから、彼女たちのことを深く掘り下げて語ることはできませんが、18年近く曲だけは聴いてきた思い入れはあるので、冒頭の感謝に至る説明を兼ねて、私なりに思う彼女たちの音楽的な功績を1つに絞って語ります。

「テクノ」の認知度とイメージ向上の功績

Perfumeの音楽性が語られる際はよく「テクノ」と評されますが、音楽ジャンルとして厳密に言うと「テクノポップ」や「エレクトロ・ポップ」とカテゴライズされる音楽性であり、「テクノ」とは大きく異なっています。

はなはだ簡単ながらその違いを述べると、「テクノポップ」はYMOの曲などのように電子楽器を使った未来的なサウンドをもったポップスであるのに対し、「テクノ」はシカゴハウスを源流としてデトロイトから発生した、ダンス・ミュージックとしてのプリミティブな享楽性や実験性を追求する音楽性であり、出自も方向性も異なります。

テクノの一例として、↓にデトロイト・テクノの重鎮であるジェフ・ミルズの名曲「The Bells」を挙げます。

このテクノポップとテクノについてより詳しく知りたい方には、上手に説明している、いっき82さんのnote『「テクノ」とは 』をご紹介します。

私はYMOなどのテクノポップはあまり通過しておらず、どちらかと言うとテクノ寄りの方にどっぷりハマったクチでした。
ただ、1990年代までは雑談で「好きな音楽はテクノ」とまかり間違って言ってしまうと、「テクノって何?」と尋ねられて説明に窮することがほとんどでした。
また、逆にデトロイト直系のテクノを何かの機会で聴いたことがある人には、「あんな無味乾燥なずっと繰り返すだけの音楽の何が良いの?」のように言われることも多少ありました。
1990年代には大手レコード会社のソニー・ミュージックが海外からテクノを輸入したことによって、日本で一大テクノブームが起きたとは言え、首都圏ならいざ知らず、とりわけ私が住む九州などの地方ではテクノについて語りにくい風潮がありました。

しかし、Perfumeが有名になって以降は「ああ、テクノも良いよね」と反応が大きく変わってきたのを肌で感じます。 二の句に「Perfumeとかでしょ?」と続く場合には、そこに結構な誤解が生じている証左ではありますが、それでも良いと考えます。
ジャンルは違えどPerfumeの曲は良い音楽ですし、厳密にジャンルについて追及すると宗教戦争になりますし、そもそもPerfume以前はテクノへの理解さえ世間にあまり無かったのですから、今はテクノ好きを公言しやすくなっている良い時代と言えます。
これはPerfumeと、そのプロデューサーである中田ヤスタカの大きな功績と言えるでしょう。
また、彼女たちのMVやライヴで描かれる「我々がかつて無邪気に夢見た未来」のビジュアルイメージのかっこよさも一役買っていると考えます。

私がハードミニマル(ストイックにループを強調するような曲調)なテクノも、分かりやすいポップスも両方大好きなタイプだから、そう思うのかも知れません。(ちなみに私が曲を作る時は、テクノ等をベースとしながらもポップであることを目指しています。)
もしかしたら、ガチのテクノマニアの方には「そんな舐めた態度でテクノ好きとか言うんじゃねぇよ」と思われるかも知れません。

しかしそれでも、デリック・メイHardfloorケン・イシイなんかを聴いて青春を過ごした私から、Perfumeに「テクノに市民権を与えてくれてありがとう」と心を込めて感謝したいのです。

独断で選ぶ、Perfumeベスト5曲

余談となりますが、ここでたくさんあるPerfumeの名曲から敢えて5曲を選びたいと思います。
世界市場を狙うために調式(中国音階)を多用した2018年頃や、シティ・ポップをフィーチャーした最新の曲よりも前の、初期~中期あたりの素直なエレクトロ・ポップ曲調の頃に好みが偏っています。

「Twinkle Snow Powdery Snow」(2008年)

エレクトロ・ハウスをポップスの領域に押し上げた傑作です。

「Dream Fighter」(2009年)

この曲は、私が簿記2級やSJC-WC(Javaプログラミング言語の認定資格)などの資格試験を受験する前に、ゲン担ぎとして必ず聴いていました。
何かに臨む時に勇気をもらえる曲です。

「Spending all my time」(2012年)

この曲が一番好きです。ダンス・ミュージックの機能性を持ったエレクトロ・ポップの一つの到達点だと思います。

「Future Pop」(2018年)

ドラムンベースとポップスの融合をとてつもないクオリティをもって果たした名曲。イギリスのドラムンベース・レーベルのHospital Recordsからリリースされても不思議ではないレベルだと感じます。
「フューチャーポップ」というジャンル名をそのまま曲名に冠する大胆さもすごいです。

「巡ループ」(2025年)

最後は、最新曲「巡ループ」を挙げます。コールドスリープ宣言を知った後に、このMVの本当の意味が分かった気がしました。

9月23日の東京ドームでのライヴでは、Perfumeは「コールドスリープをした後、必ず帰ってくる」と約束してくれました。
それを希望にみんなで待ちましょう。
その時は、きっとまた「夢見た希望に満ちる未来の姿」を体現してくれること、そしてその瞬間はそんなに先のことではないと信じて。


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