2015年3月25日に自作曲「I Don’t Know What She’s Saying」が出来上がりました。これは初めてボーカルを強く意識することに挑戦した曲です。
ずいぶん昔から「本格的なボーカルものを手がけたい」と常々思っていました。
遊びで友人が歌ったものに曲をあてたりだとか、曲中に短い長さの声を使用したりだとかはありましたが、本格的な歌モノを手がけたことがありません。その理由は身近にボーカリストがいないことです。仕方がないので自分で歌ってみたりしたのですが、ひどい音痴である以上に、あまりにも自分の声が好きになれずに断念しました。
ボーカルものを手がける手段として次に考えられるのは 合成音声ソフトウェア「VOCALOID」の導入です。
確かに VOCALOID は技術的に素晴らしいですし、多くの方が VOCALOID を使用してとても魅力的な楽曲を作られています。しかし個人的に声自体は良いと感じるのですが、その歌声が少々好みに合いませんでした。
ここまでお読みいただいた方は、もうご察しいただいていることでしょうが、私はどうにもワガママすぎるのだと自戒を込めて自覚するばかりです。「でも」「だって」ばっかりですよ、中年になっても。
こうやってウダウダ思い悩んでいる間にも「歌モノを手かげたい欲」は日に日に増すばかりでした。
何年もそうこう思いあぐねていたところ、最近になって「このままじゃラチがあかん! グダグダ言う前にできることからやりたまえ!」と私の心の中の架空の鬼部長(後に部下へのセクハラで解雇)から叱責を受けました。そこでハタと思い至りました。「ずいぶん昔に買ったボーカル素材集があるから、それをうまいこと使ってボーカル(的な)ものを作ろう」と。
早速CDラックにしまい込んでいた目当てのボーカル素材集CDを引っ張り出してきてパソコンに取り込み、作業を開始しましたが、これがどうにもうまくいきませんでした。収録されていた音声が「ウー、ベイベェー」とか「ウォーオウォウォオー」とかのように、一発ネタとしては使えるのですが、主旋律を歌わせるには難しい代物だったのです。ここでまたハタと気づきました。「そういえば、このボーカル素材集を高いお金を出して買ったものの、同じ事を感じてガッカリしたんだったっけ」(ちなみに、その素材集のボイスは結局「I Don’t~」で結構使うことになりました)。
この様に、人は年をとると若い頃の記憶を失っていくのですね。そがんと怖かね(長崎弁で「それは恐ろしくてたまらないことだと思いませんか? ねえ、思うでしょう? 思うって言ってよ、心細いから」の意)。
ひとしきりガッカリしたものの、既に「ボーカル(的な)ものに挑戦」のお題目が立ち上がってしまった手前、なかなかに諦めがつきません。そして、例えるならば「今日は買い置きしていたカレーを食べようと帰宅したものの、家にその備蓄が無く、でも口の中はカレーを迎える気満々だから、仕方なく近くのスーパーに買いに行く」ノリで、新たにボーカル素材を買い求めることにしました。そうして素材販売サイトで色々試聴したところ、好みにあったものが見つかり、それが今回の「I Don’t Know What She’s Saying」に使われたという顛末となった次第です。
しかしいくら素材集とは言っても、1曲丸々分のボーカルパートが収録されているわけではなく、「I Don’t~」でいうところのサビ部分の長さしかないので、それを切ったり、貼ったり、順番を入れ替えたり、長さや音程を変えたりして、全体を作り上げることとなりました。感覚的には「お金を払ってリミックスしている」気分に近かったです。
こうしてできた「I Don’t~」は所期の目標だった「本格的なボーカルもの」からは遠い形であるものの、それでもここまでボーカルを意識して作ったのは初めてだったので、想像していた以上に難しいこと、また自分の技術的な課題点などにたくさん気づかされました。そして何より、楽しく挑戦することができました。
残念ながら「I Don’t~」を作った後でも「歌モノを手かげたい欲」はまったく収まらず、とは言え今後もそれを手がけられる予定はゼロなのですが、幸い今回買ったボーカル素材集にまだ使っていないネタがあるので、気が向いたらまた「ボーカルもの的」な曲を作りたいと思います。
そう、もういい大人になったのだから、自分の身の丈にあった範囲のなかで最大限努力することを模索するべきなのですよね。……あー、メイシー・グレイ版VOCALOID、作られないかなー。絶対買うのに。